【完全ガイド】営業 戦略 立案の5ステップ|テンプレート付で初心者も安心
- seira1001
- 1 日前
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営業戦略の立案と聞くと「難しそう」「何から手をつければ…」と悩んでいませんか。適切な営業戦略は、属人化を防いで組織全体の営業力を底上げし、成果を最大化するために不可欠です。本記事では、初心者でも迷わず実践できる営業戦略の立て方を5つのステップで徹底解説。市場分析のフレームワークから、すぐに使えるテンプレートの活用法まで、明日から使える具体的なノウハウを網羅的にご紹介します。
1. 営業戦略の立案が重要な3つの理由
「営業は気合と根性だ」という時代は終わりを告げました。現代のビジネス環境において、計画的な営業戦略なしに継続的な成果を上げることは極めて困難です。なぜなら、戦略なき営業活動は、暗闇の中を手探りで進むようなものであり、非効率で再現性がありません。ここでは、なぜ今、営業戦略の立案が重要視されるのか、その核心となる3つの理由を解説します。
1.1 理由1 営業活動の属人化を防ぎ組織力を強化する
営業戦略がない組織では、個々の営業担当者のスキルや経験、勘に頼った「属人化」した活動に陥りがちです。エース社員一人の活躍で売上が成り立っている状態は、その社員が退職・異動した際に業績が急落するリスクを常に抱えています。また、成功のノウハウが個人の中に留まってしまうため、新人や若手メンバーが育ちにくく、チーム全体の成長が停滞する原因にもなります。
明確な営業戦略を策定し、組織全体で共有することで、成功パターンや顧客へのアプローチ方法が標準化され、誰が担当しても一定水準の成果を出せる体制が整います。これにより、個人の能力に依存するのではなく、組織全体の力で目標を達成する、再現性の高い強力な営業チームを構築することが可能になります。
1.2 理由2 限りあるリソースを最大限に活用する
ビジネスにおいて、投入できるリソース(人材、時間、予算)は有限です。営業戦略がないと、どの顧客に、いつ、どのようなアプローチをすべきかの判断基準が曖昧になり、貴重なリソースを無駄に消費してしまいます。例えば、成約確度の低い見込み客に多くの時間を費やしたり、費用対効果の低い施策に予算を投じてしまったりするケースです。
営業戦略を立案するプロセスでは、自社の強みを活かせる市場や、最も価値を提供できる顧客層を明確にします。その結果、最も成果に繋がりやすい領域に経営資源を集中投下できるようになり、営業活動全体の生産性が飛躍的に向上します。これは、最小のコストで最大の成果を生み出すための、いわば「羅針盤」の役割を果たすのです。
1.3 理由3 市場や顧客の変化に迅速に対応する
現代の市場は、テクノロジーの進化、競合他社の新サービスの登場、顧客ニーズの多様化など、常に目まぐるしく変化しています。昨日まで有効だった営業手法が、今日にはもう通用しなくなることも珍しくありません。このような変化の激しい環境で生き残るためには、外部環境の変化を敏感に察知し、柔軟に対応していく必要があります。
営業戦略の立案には、市場や競合の動向を分析するプロセスが不可欠です。定期的に戦略を見直す文化を根付かせることで、市場や顧客の変化をいち早く捉え、自社の進むべき方向性を迅速に修正することが可能になります。変化を脅威ではなくチャンスと捉え、持続的な成長を遂げるためには、常にアップデートされ続ける営業戦略が欠かせないのです。
2. 営業戦略と営業戦術の違いとは

営業戦略の立案を進めるにあたり、まず「戦略」と「戦術」という2つの言葉の違いを明確に理解しておくことが不可欠です。この2つはしばしば混同されがちですが、その役割と階層は全く異なります。両者の関係性を正しく把握することが、効果的な営業計画を立てる第一歩となります。
2.1 戦略は「何をすべきか」という方針
営業戦略とは、事業目標や営業目標を達成するための、長期的かつ大局的な方針やシナリオのことです。「どの市場で、誰に、どのような価値を提供して勝つのか」という、進むべき方向性そのものを指します。いわば、目的地にたどり着くための「羅針盤」や「設計図」のような役割を果たします。
例えば、「高付加価値な製品で、首都圏の中小企業市場におけるシェアを3年で10%向上させる」といったものが戦略にあたります。これは具体的な行動ではなく、組織全体で共有すべきゴールと、そこへ至るまでの基本的な考え方を示すものです。
2.2 戦術は「どのように実行するか」という具体策
一方、営業戦術とは、定められた戦略を実行するための、より具体的・短期的な手段や行動計画を指します。戦略という大きな方針を実現するために、「いつ、誰が、何を使って、どのように行動するのか」を詳細に定めたものです。戦略が「設計図」なら、戦術は「具体的な施工手順」や「使用する道具」にあたります。
先の戦略例で言えば、「首都圏の中小企業経営者向けに、製品導入事例セミナーを毎月開催する」「業界専門誌に比較広告を掲載する」「テレアポ部隊が1日100件の新規コールを行う」といった具体的なアクションプランが戦術となります。
この2つの違いを、以下の表で整理してみましょう。
項目 | 営業戦略 | 営業戦術 |
役割 | 目的を達成するための大局的な方針・シナリオ | 戦略を実行するための具体的な手段・行動計画 |
視点 | 長期的・全体最適 | 短期的・部分最適 |
問い | 何をすべきか (What) | どのように実行するか (How) |
具体例 | 「競合との差別化を図り、高価格帯市場でNo.1を目指す」 | 「富裕層向けメディアへの広告出稿」「個別相談会の実施」 |
変更頻度 | 低い(市場の大きな変化がない限り維持) | 高い(状況に応じて柔軟に見直し・変更) |
このように、優れた戦略がなければ、どれだけ優れた戦術を積み重ねても成果には結びつきません。まずは組織全体で共有できる明確な「戦略」を立て、その上で効果的な「戦術」を計画していくことが成功の鍵となります。
3. 【5ステップ】初心者でもできる営業戦略の立案プロセス

営業戦略の立案は、難しく考える必要はありません。ここでは、初心者の方でも体系的に取り組めるよう、5つのステップに分けて具体的なプロセスを解説します。紹介するフレームワークを活用しながら、自社の状況に合わせて一歩ずつ進めていきましょう。
3.1 ステップ1 現状分析|市場・競合・自社を正しく把握する
効果的な戦略を立てるための第一歩は、自社が置かれている状況を客観的かつ正確に把握することです。思い込みや感覚に頼らず、データとフレームワークを用いて「市場」「競合」「自社」の3つの視点から分析を行いましょう。
3.1.1 市場分析(PEST分析・3C分析)
まずは、自社を取り巻く外部環境を分析します。マクロな視点とミクロな視点の両方から市場を捉えることが重要です。
PEST分析(マクロ環境分析): 自社ではコントロールできない、世の中全体の大きな流れを把握します。政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から、自社のビジネスに与える影響を洗い出します。例えば、法改正や景気動向、消費者の価値観の変化、新しいテクノロジーの登場などが該当します。
3C分析(ミクロ環境分析): 事業に直接的な影響を与える要因を分析します。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から、市場のニーズや競合の動向、自社の強み・弱みを整理し、事業成功の鍵となる要因(KSF)を見つけ出します。
3.1.2 競合分析(4P分析)
次に、競合他社がどのような戦略で市場にアプローチしているかを具体的に分析します。ここでは、マーケティングの基本的なフレームワークである「4P分析」が役立ちます。
4P分析による競合比較の例(SaaSツール) | |||
分析項目 | 自社 | 競合A社 | 競合B社 |
製品(Product) | 多機能だが操作が複雑 | 機能は限定的だがUIが秀逸 | 特定業界に特化した機能 |
価格(Price) | 月額5万円(高価格帯) | 月額1万円(低価格帯) | 月額3万円(中価格帯) |
流通(Place) | 直販のみ | Webサイトからの申込のみ | 代理店販売が中心 |
販促(Promotion) | セミナー開催、展示会出展 | Web広告、SNSマーケティング | 業界専門誌への広告掲載 |
このように競合と比較することで、自社が取るべき戦略の方向性や差別化のポイントが明確になります。
3.1.3 自社分析(SWOT分析)
最後に、これまでの分析結果を踏まえて自社の内部環境と外部環境を整理します。SWOT分析は、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの要素を掛け合わせて、具体的な戦略を導き出すためのフレームワークです。
強み(S): 競合他社に比べて優れている点(技術力、ブランド力、顧客基盤など)
弱み(W): 競合他社に比べて劣っている点(価格、知名度、営業リソースなど)
機会(O): 自社にとって追い風となる外部環境の変化(市場拡大、法改正など)
脅威(T): 自社にとって向かい風となる外部環境の変化(競合の参入、景気後退など)
これらの要素を洗い出すことで、自社のポテンシャルを最大限に活かすための戦略オプションが見えてきます。
3.2 ステップ2 目標設定|KGIとKPIを明確にする
現状分析で立ち位置を把握したら、次に目指すべきゴールを具体的に設定します。ここでは、最終目標である「KGI」と、それを達成するための中間指標である「KPI」を設定することが不可欠です。
3.2.1 KGI(重要目標達成指標)の設定例
KGI(Key Goal Indicator)は、戦略期間の最終的なゴールを定量的に示したものです。「いつまでに」「何を」「どれくらい」達成するのかを明確に定義します。設定する際は、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)を意識した「SMARTの法則」を用いると効果的です。
例1: 2025年3月末までに、事業部全体の売上高を前年比120%の6億円にする。
例2: 今年度下半期で、主力製品Aの市場シェアを10%から15%に拡大する。
例3: 1年間で、新規顧客からの売上を3,000万円創出する。
3.2.2 KPI(重要業績評価指標)の設定例
KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するためのプロセスが順調に進んでいるかを測るための中間指標です。KGIから逆算して、日々の営業活動に直結する具体的な数値を設定します。
例えば、KGIが「年間新規契約売上1億2,000万円」の場合、以下のようにKPIを分解できます。
KGIからKPIへの分解例 | ||
指標 | 計算式 | 目標数値(月間) |
KGI:新規契約売上 | - | 1,000万円 |
KPI:新規契約件数 | 売上 ÷ 平均契約単価(50万円) | 20件 |
KPI:商談件数 | 契約件数 ÷ 受注率(25%) | 80件 |
KPI:アポイント獲得数 | 商談件数 ÷ 商談化率(50%) | 160件 |
このようにKPIを設定することで、目標達成に向けた進捗を可視化し、問題が発生した際に迅速な対策を講じることが可能になります。
3.3 ステップ3 ターゲット設定|STP分析で狙うべき顧客を決める
市場全体を闇雲に狙うのではなく、自社の製品やサービスを最も評価してくれる可能性の高い顧客層にリソースを集中させることが成功の鍵です。ここでは、STP分析を用いて、狙うべき市場(顧客)を明確にしていきます。
3.3.1 セグメンテーション(市場の細分化)
セグメンテーションとは、不特定多数の顧客が存在する市場を、共通のニーズや性質を持つ小さなグループ(セグメント)に分割することです。切り口には以下のような変数があります。
地理的変数(ジオグラフィック): 国、地域、都市の規模、人口密度など(例:首都圏、関西エリア)
人口動態変数(デモグラフィック): 年齢、性別、所得、職業、業種、企業規模など(例:30代男性、従業員50名以下の中小企業)
心理的変数(サイコグラフィック): ライフスタイル、価値観、パーソナリティなど(例:環境問題を重視する層、コスト意識が高い層)
行動変数(ビヘイビアル): 購買履歴、使用頻度、求めるベネフィットなど(例:高価格帯の商品を好むリピーター)
3.3.2 ターゲティング(狙う市場の決定)
細分化したセグメントの中から、自社の強みを最も活かせ、かつ収益性が高いと判断できる市場をターゲットとして選定します。市場規模、成長性、競合の激しさ、自社との適合性などを総合的に評価し、「一点集中型」「複数セグメント型」など、自社のリソースに合った戦略を決定します。
3.3.3 ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)
ターゲット市場を決定したら、その市場において競合製品と自社製品を比較し、顧客の心の中でどのような独自の立ち位置を築くかを明確にします。価格、品質、機能、サポート体制、ブランドイメージなどの軸で「ポジショニングマップ」を作成し、競合にはない独自の価値(差別化ポイント)を確立します。
3.4 ステップ4 アプローチ策定|具体的な営業戦術を計画する
ターゲット顧客に価値を届けるための具体的な行動計画、つまり「営業戦術」を策定します。「誰に」「何を」売るかが決まったら、次は「どのように」売るのかを考えます。
3.4.1 新規顧客へのアプローチ方法
ターゲット顧客の特性や購買プロセスに合わせて、最適なアプローチ手法を組み合わせます。
アウトバウンド営業: テレアポ、メール営業、DM(ダイレクトメール)、フォーム営業など、企業側から能動的にアプローチする方法。
インバウンド営業: オウンドメディア(ブログ記事)、SEO、Web広告、SNS、ウェビナー(Webセミナー)などを通じて顧客からの問い合わせを獲得する方法。
3.4.2 既存顧客へのアプローチ方法
新規顧客の獲得には、既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかると言われています(1:5の法則)。LTV(顧客生涯価値)を最大化するため、既存顧客へのアプローチも計画に含めましょう。
アップセル: 現在利用している商品よりも高価格帯の上位モデルを提案する。
クロスセル: 関連する別の商品やサービスを合わせて提案する。
フォローアップ: 定期的な情報提供や活用支援を通じて顧客満足度を高め、解約を防ぐ。
3.4.3 営業プロセスの標準化
アプローチ手法と合わせて、営業活動のプロセスを標準化することも重要です。初回接触から受注、アフターフォローまでの一連の流れを可視化し、各フェーズでの目標(KPI)や行動基準、トークスクリプト、使用する資料などを整備します。これにより、営業担当者個人のスキルに依存することなく、組織全体で安定した成果を出せるようになります。
3.5 ステップ5 実行と改善|PDCAサイクルで戦略を磨き上げる
営業戦略は、一度立案したら終わりではありません。市場や顧客の状況は常に変化するため、実行した結果を検証し、継続的に改善していくプロセスが不可欠です。ここでは、代表的な改善フレームワークである「PDCAサイクル」を活用します。
3.5.1 Plan(計画)
これまでのステップ1から4で立案した営業戦略と戦術が、この「計画」に該当します。KGI・KPIの目標値や具体的なアクションプランを明確にしておきます。
3.5.2 Do(実行)
計画に基づいて、営業活動を実行します。この際、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)といったツールを活用し、行動履歴や商談の進捗状況をデータとして正確に記録することが後の検証フェーズで重要になります。
3.5.3 Check(評価)
一定期間(週次、月次、四半期など)ごとに、実行した結果を振り返り、計画との差異を評価します。設定したKPIが達成できているか、達成または未達成の原因は何かを客観的に分析します。成功事例や失敗事例をチームで共有することも有効です。
3.5.4 Action(改善)
評価・分析の結果をもとに、次の行動計画を立てます。戦略や戦術のどこに問題があったのかを特定し、改善策を講じます。例えば、「アポイント獲得数がKPIに達していない」のであれば、「ターゲットリストを見直す」「トークスクリプトを修正する」といった具体的な改善アクションを次のPlanに反映させ、再びサイクルを回していきます。
4. 営業戦略の立案に役立つフレームワーク一覧

営業戦略をゼロから考えるのは困難ですが、フレームワークを活用することで、思考を整理し、抜け漏れなく分析を進めることができます。ここでは、営業戦略の立案プロセスで特に役立つ代表的なフレームワークを5つご紹介します。
4.1 PEST分析
PEST(ペスト)分析は、自社を取り巻く外部環境(マクロ環境)が、現在または将来にどのような影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークです。自社ではコントロールできない大きな社会の流れを理解するのに役立ちます。
要素 | 概要 | 分析例 |
Politics(政治的要因) | 法律、規制、税制、政治動向など | 働き方改革関連法の施行、環境規制の強化 |
Economy(経済的要因) | 景気動向、物価、金利、為替レートなど | 景気後退による消費の冷え込み、原材料価格の高騰 |
Society(社会的要因) | 人口動態、ライフスタイル、価値観の変化など | 少子高齢化の進行、サステナビリティへの関心の高まり |
Technology(技術的要因) | 新技術の登場、技術革新、特許など | AIやDXの進展、5Gの普及 |
4.2 3C分析
3C分析は、事業を成功に導くための要因(KSF:Key Success Factor)を見つけ出すためのフレームワークです。「市場・顧客」「競合」「自社」の3つの視点から分析し、自社が勝てる領域を明らかにします。
要素 | 分析内容 |
Customer(市場・顧客) | 市場規模や成長性、顧客のニーズや購買行動を分析します。 |
Competitor(競合) | 競合他社の強み・弱み、市場シェア、戦略などを分析します。 |
Company(自社) | 自社の強み・弱み、リソース、企業理念などを客観的に分析します。 |
4.3 SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、自社の内部環境と外部環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素に整理し、戦略の方向性を探るためのフレームワークです。現状を多角的に評価し、具体的なアクションプランに繋げることができます。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | Strength(強み) 目標達成に貢献する自社の長所 | Weakness(弱み) 目標達成の障害となる自社の短所 |
外部環境 | Opportunity(機会) 目標達成の追い風となる市場の変化 | Threat(脅威) 目標達成の障害となる市場の変化 |
4.4 STP分析
STP分析は、「どの市場で、誰を相手に、どのような価値を提供して戦うか」を明確にするためのマーケティングフレームワークです。市場を細分化し、狙うべきターゲットを定め、自社の独自の立ち位置を築くために用います。
ステップ | 内容 |
Segmentation(セグメンテーション) | 市場を年齢、性別、地域、価値観などの共通のニーズや性質を持つグループに細分化します。 |
Targeting(ターゲティング) | 細分化した市場の中から、自社の強みを最も活かせる、魅力的な市場を狙うターゲットとして選びます。 |
Positioning(ポジショニング) | ターゲット市場において、競合と差別化できる自社独自の立ち位置(ポジション)を明確にします。 |
4.5 4P/4C分析
4P分析は、具体的な実行計画(戦術)を立てる際に役立つフレームワークです。近年では、企業視点の「4P」に加え、顧客視点の「4C」で考えることの重要性が増しています。両方の視点から検討することで、より顧客に響くアプローチが可能になります。
4P(企業視点) | 4C(顧客視点) | 内容 |
Product(製品・サービス) | Customer Value(顧客価値) | 顧客にどのような価値を提供できるか |
Price(価格) | Cost(顧客コスト) | 顧客が支払う時間や労力を含めたコストは妥当か |
Place(流通・チャネル) | Convenience(利便性) | 顧客にとって入手しやすいか |
Promotion(販促活動) | Communication(コミュニケーション) | 顧客との双方向の対話ができているか |
5. 【テンプレート付】今すぐ使える営業戦略立案シート

ここまでのステップで解説した内容を実践に移すために、すぐに使える営業戦略立案シートをご用意しました。このテンプレートを活用することで、複雑な戦略立案のプロセスを整理し、抜け漏れなく具体的な計画に落とし込むことができます。Excel形式で提供するため、自社の状況に合わせて自由にカスタマイズ可能です。
5.1 テンプレートのダウンロード方法
本テンプレートは、営業戦略立案の5ステップに沿って構成されています。各項目を埋めていくだけで、自社独自の営業戦略が完成するように設計されています。ダウンロード後、すぐにチームで共有し、戦略策定の議論を始めることができます。ぜひご活用ください。
5.2 テンプレートの具体的な使い方と記入例
テンプレートの各項目について、具体的な記入例を交えながら使い方を解説します。ここでは、法人向け勤怠管理システム「Time Keeper」を提供するIT企業を例に見ていきましょう。
営業戦略立案シート 記入例 | ||
項目 | 記入例 | ポイント |
1. 現状分析(市場・競合・自社) |
| PEST分析や3C分析、SWOT分析などのフレームワークの結果を要約して記入します。客観的なデータに基づいて、自社の立ち位置を正確に把握することが重要です。 |
2. 目標設定(KGI/KPI) |
| KGIは最終的なゴール、KPIはゴール達成のための中間指標です。必ず具体的で測定可能な数値を設定し、達成可能かつ挑戦的な目標にしましょう。 |
3. ターゲット設定(STP分析) |
| STP分析に基づき、最も自社の強みが活かせる市場と顧客像を明確にします。「誰に」「どのような価値を」提供するのかを具体的に定義することが、後の戦術の効果を最大化します。 |
4. アプローチ策定(営業戦術) |
| ターゲット顧客に最も効果的にアプローチできる方法を具体的に計画します。オンライン・オフライン問わず、顧客の購買プロセスに合わせた複数の戦術を組み合わせることが成功の鍵です。 |
5. 実行と改善(PDCA) |
| 計画を実行し、定期的に成果を評価して改善策を講じるサイクルを定めます。「やりっぱなし」にせず、データに基づいて戦略を継続的に見直す仕組みを構築することが不可欠です。 |
6. 営業戦略の立案で失敗しないための3つの注意点

綿密に計画を立てたはずの営業戦略が、なぜか上手くいかない。その背景には、立案プロセスにおけるいくつかの落とし穴が存在します。ここでは、多くの企業が陥りがちな失敗を避け、戦略を成功に導くための3つの重要な注意点を解説します。
6.1 注意点1 実行不可能な高い目標を設定しない
意欲的な目標設定は重要ですが、現実離れした高すぎる目標は逆効果です。現場の営業担当者が「到底達成できない」と感じてしまうと、モチベーションが著しく低下し、戦略そのものが形骸化してしまいます。自社のリソース(人員、予算、時間)や現在の市場での立ち位置を冷静に分析し、現実的に達成可能なラインを見極めることが不可欠です。
目標設定の際は、具体的で実行可能な指標を定める「SMART原則」を参考にすると良いでしょう。
要素 | 内容 | 具体例 |
Specific(具体的) | 誰が読んでも同じ解釈ができるか | 新規顧客からの売上を増やす |
Measurable(測定可能) | 数値で測定できるか | 新規顧客からの売上を1億円増やす |
Achievable(達成可能) | 現実的に達成できる目標か | 過去の実績やリソースから見て、売上1億円増は可能か |
Related(関連性) | 企業の最終目標と関連しているか | 新規売上増が、全社の利益目標達成に貢献するか |
Time-bound(期限) | いつまでに達成するのか期限が明確か | 今年度末までに、新規顧客からの売上を1億円増やす |
6.2 注意点2 現場の意見を無視して立案しない
経営層や管理職だけで立案された戦略は、しばしば「机上の空論」となりがちです。顧客と日々向き合っているのは、現場の営業担当者です。彼らが持つ顧客の生の声、競合の最新動向、市場の肌感覚といったリアルな情報は、戦略の精度を飛躍的に高めるための貴重な財産です。戦略立案の段階でヒアリングやワークショップを実施し、現場の意見を積極的に取り入れることが重要です。
また、現場のメンバーが戦略の策定プロセスに関わることで、当事者意識が芽生え、戦略実行フェーズでの協力体制が格段に強化されるというメリットもあります。
6.3 注意点3 戦略を立てただけで満足しない
営業戦略は、立案して終わりではありません。むしろ、実行してからが本当のスタートです。市場環境、顧客ニーズ、競合の動きは絶えず変化しています。一度立てた戦略が永遠に通用するわけではないことを肝に銘じ、定期的に成果を検証し、改善を繰り返す必要があります。
事前に設定したKPI(重要業績評価指標)の進捗を週次や月次でモニタリングし、計画通りに進んでいない場合は、その原因を分析し、速やかに戦術の修正や戦略の見直しを行いましょう。PDCAサイクルを回し続けることで、戦略はより強固で実用的なものへと磨かれていきます。
7. まとめ
本記事では、営業戦略の立案プロセスを5つのステップで解説しました。営業戦略は、属人化を防ぎ組織力を強化するだけでなく、変化の激しい市場で成果を出すために不可欠です。現状分析から目標設定、具体的な戦術策定、そしてPDCAによる改善まで、一連の流れを正しく理解することが重要です。ご紹介したフレームワークやテンプレートを活用し、現場の声も取り入れながら、自社に最適な営業戦略を立案・実行していきましょう。
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