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【初心者向け】これなら分かる営業戦略の立案|フォーマット付で簡単作成

営業 戦略 立案

行き当たりばったりの営業から脱却し、安定的に成果を出したいとお考えですか?その鍵は、再現性のある営業戦略の立案にあります。本記事では、初心者でも迷わない戦略の立て方を5つのステップで徹底解説。分析に役立つフレームワークから、すぐに使える無料フォーマットまで網羅しているため、この記事を読めば、誰でも属人化を防ぎ、成果につながる具体的な営業計画を作成できます。


1. 営業戦略の立案はなぜ重要なのか?基本を解説

営業活動において、「気合と根性でとにかく行動量を増やす」というスタイルだけでは、安定した成果を出し続けることは困難です。市場や顧客のニーズが多様化する現代において、ビジネスを成功に導くためには、羅針盤となる「営業戦略」の立案が不可欠です。計画的に営業活動を進めることで、組織全体の生産性を最大化し、持続的な成長を実現できます。

この章では、営業戦略の重要性について、その基本から分かりやすく解説します。


1.1 営業戦略と営業戦術の決定的な違い

営業戦略を理解する上で、まず「営業戦術」との違いを明確に区別する必要があります。この2つは混同されがちですが、その役割と階層は全く異なります。

営業戦略とは、事業目標を達成するための「全体的な方針」や「シナリオ」を指します。「どの市場で、誰に、何を、どのように売るか」という、営業活動の大きな方向性を定めるものです。一方、営業戦術は、その戦略を実行するための「具体的な手段」や「アクション」を指します。

両者の違いを以下の表にまとめました。

項目

営業戦略 (Strategy)

営業戦術 (Tactics)

目的

目的を達成するための「方向性」を決定する

戦略を実行するための「具体的な方法」を決定する

時間軸

中長期的(例:1年〜3年)

短期的(例:日、週、月単位)

具体性

抽象的・概念的

具体的・実践的

具体例

「中小企業向けSaaS市場でのシェア率を20%向上させる」


「既存顧客からのアップセル・クロスセルを強化する」

「1日50件のテレアポを実施する」


「月に2回、顧客向けWebセミナーを開催する」

優れた営業戦略がなければ、どれだけ優れた営業戦術を実行しても、その効果は限定的です。まずは航路図である戦略をしっかりと描き、その上で具体的な戦術に落とし込むことが成功の鍵となります。


1.2 優れた営業戦略がもたらす3つのメリット

綿密に練られた営業戦略は、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。


1.2.1 メリット1:営業活動の効率化と生産性向上

明確な営業戦略があると、チーム全体が「どの顧客に」「何をすべきか」を共有できます。これにより、成約確度の低い見込み客へのアプローチや、場当たり的な訪問といった無駄な活動を削減できます。限られたリソース(人材・時間・予算)を最も効果的な場所に集中投下できるため、営業活動全体の効率と生産性が飛躍的に向上します。


1.2.2 メリット2:属人化の防止と組織力の強化

個人のスキルや経験だけに頼る営業は「属人化」を招き、その担当者がいなくなると売上が大きく落ち込むリスクがあります。営業戦略を策定し、組織全体で共有することで、成功パターンやノウハウがチームの資産となり、誰が担当しても一定水準以上の成果を出せる再現性の高い仕組みを構築できます。これにより、新人教育もスムーズに進み、組織全体の営業力が底上げされます。


1.2.3 メリット3:的確な意思決定と変化への迅速な対応

営業戦略は、日々の活動における判断基準となります。例えば、新たなアプローチ手法を試すべきか、ある顧客への提案を続けるべきかといった判断に迷った際、戦略という明確な軸があれば、一貫性のある的確な意思決定を下すことができます。また、市場環境や競合の動向が変化した際にも、戦略に基づいて迅速かつ柔軟に対応方針を修正することが可能になります。


2. 初心者でも簡単 営業戦略を立案する5つのステップ

営業 戦略 立案

営業戦略の立案と聞くと、難しく感じるかもしれません。しかし、正しい手順を踏めば、初心者でも精度の高い戦略を立てることが可能です。ここでは、誰でも実践できる5つのステップに分けて、営業戦略の作り方を具体的に解説します。


2.1 ステップ1 外部環境と内部環境を分析する

優れた営業戦略を立案するための第一歩は、現状を正確に把握することです。思い込みや勘に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて自社の立ち位置を分析します。分析は大きく「外部環境」と「内部環境」の2つに分けて行います。


2.1.1 市場や競合を分析する外部環境分析

外部環境分析とは、自社ではコントロールできない外部の要因を分析することです。市場の動向や競合の状況を把握することで、事業機会やリスクを発見できます。具体的には、以下のような項目を調査・分析します。

分析項目

主な分析内容

市場分析

市場規模、成長率、顧客ニーズの変化、業界のトレンド、関連法規の改正など

競合分析

競合他社の製品・サービス、価格、強み・弱み、市場シェア、営業戦略など

顧客分析

顧客の属性(年齢、性別、業種など)、購買動機、利用シーン、課題や悩みなど

これらの情報は、業界レポートやニュース、競合のウェブサイト、顧客へのヒアリングなどから収集します。


2.1.2 自社の強みと弱みを把握する内部環境分析

内部環境分析では、自社の製品や組織体制など、社内のリソースを客観的に評価します。自社の「武器」と「課題」を明確にすることで、勝てる戦略の方向性が見えてきます。

分析項目

主な分析内容

製品・サービス

品質、機能、デザイン、ブランド力、独自性、価格競争力など

販売チャネル

直販、代理店、オンラインストアなど、顧客への提供経路の強み・弱み

組織・人材

営業担当者のスキルや人数、組織の文化、マーケティング部門との連携体制など

財務状況

売上、利益率、キャッシュフロー、投資可能な予算など

社内の各部署へのヒアリングや、過去の営業データなどを活用して、自社の現状を多角的に分析しましょう。


2.2 ステップ2 明確な目標を設定する(KGI・KPI)

現状分析ができたら、次はその分析結果に基づいて「どこを目指すのか」というゴールを設定します。このとき重要なのが、最終目標である「KGI」と、中間目標である「KPI」を明確に分けることです。

  • KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標):最終的に達成したいゴール。例:売上高、利益額、市場シェアなど。

  • KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標):KGIを達成するための中間的な指標。例:新規アポイント獲得数、商談化率、成約率など。

KGIだけでは日々の行動が曖昧になりますが、KPIを設定することで、目標達成までのプロセスが可視化され、進捗管理が容易になります。目標は「SMARTの法則(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)」を意識して設定すると、より実効性が高まります。


KGIとKPIの設定例(法人向けSaaS営業の場合)

指標

目標設定の例

KGI

年間売上高1億円を達成する

KPI

  • 月間リード獲得数:200件

  • 商談化率:30%

  • 月間商談数:60件(200件 × 30%)

  • 成約率:20%

  • 月間成約数:12件(60件 × 20%)

2.3 ステップ3 ターゲットとなる顧客を具体化する

次に、「誰に」製品やサービスを届けるのか、ターゲットとなる顧客を具体的に定めます。市場全体を狙うのではなく、自社の強みが最も活かせる、特定の顧客層にリソースを集中させることが成功の鍵です。

BtoBであれば「業種、企業規模、所在地、抱えている課題」、BtoCであれば「年齢、性別、居住地、ライフスタイル、価値観」といった軸で市場を細分化(セグメンテーション)し、最もアプローチすべき市場(ターゲット)を決定します。

さらに、ターゲット顧客の具体的な人物像である「ペルソナ」を設定すると、営業チーム全体で顧客イメージを共有しやすくなります。ペルソナを設定することで、どのようなメッセージが響くのか、どのチャネルでアプローチすべきかといった戦術がより明確になります。


2.4 ステップ4 具体的なアクションプラン(営業戦術)に落とし込む

目標とターゲットが決まったら、それを達成するための具体的な行動計画、つまり「営業戦術」に落とし込みます。戦略が「方針」であるのに対し、戦術は「実行プラン」です。「いつ、誰が、何を、どのように行うのか」を5W1Hで明確にすることが重要です。

例えば、ステップ2で設定したKPI「月間リード獲得数200件」を達成するためのアクションプランは、以下のように具体化できます。

アクションプラン

担当者

実施期間

具体的な内容

Webセミナーの開催

マーケティング部

毎月第3水曜日

業界の最新トレンドをテーマに開催し、参加者リストを獲得する。目標集客数100名。

テレアポ

営業1課

毎週月・火曜日

過去の失注顧客リストに対し、新機能の案内をフックにアプローチする。1人あたり1日50件架電。

展示会への出展

営業企画部

6月10日〜12日

業界最大級の展示会に出展し、名刺情報を獲得する。目標獲得数500枚。

2.5 ステップ5 実行と効果測定で改善を繰り返す(PDCA)

営業戦略は一度立てたら終わりではありません。計画通りに実行(Do)し、定期的に進捗状況や成果を測定・評価(Check)し、改善策を講じる(Action)というPDCAサイクルを回し続けることが不可欠です。

市場環境や競合の動きは常に変化するため、計画通りに進まないことこそが当たり前と捉えましょう。週次や月次の営業会議でKPIの進捗を確認し、目標との乖離があれば、その原因を分析します。「アクションプランの量が足りないのか」「ターゲットの選定が間違っていたのか」「そもそも目標設定が高すぎたのか」など、要因を特定し、速やかに軌道修正を行いましょう。この改善の繰り返しが、営業戦略の精度を高め、組織を強くしていきます。


3. 営業戦略の立案に役立つ定番フレームワーク4選

営業 戦略 立案

営業戦略をゼロから考えるのは難しいものです。そこで役立つのが、思考を整理し、分析の抜け漏れを防ぐための「フレームワーク」です。ここでは、営業戦略の立案で頻繁に用いられる定番のフレームワークを4つ厳選してご紹介します。


3.1 3C分析で市場と自社の立ち位置を把握する

3C分析は、「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」という3つの「C」の観点から外部環境と内部環境を分析し、自社の成功要因(KSF: Key Success Factor)を見つけ出すためのフレームワークです。市場や顧客が何を求めていて、競合がどのように動いているかを把握した上で、自社の強みをどう活かすべきか、客観的に自社の立ち位置を理解するのに役立ちます。

分析項目

主な分析内容

市場・顧客 (Customer)

市場規模、成長性、顧客ニーズ、購買行動、顧客層の変化など

競合 (Competitor)

競合の数、市場シェア、各社の強み・弱み、製品・サービス、価格戦略など

自社 (Company)

自社のビジョン、売上、市場シェア、強み・弱み、リソース(人・物・金)など

3.2 SWOT分析で戦略の方向性を定める

SWOT分析は、自社の状況を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの要素に整理して分析するフレームワークです。内部環境である「強み」「弱み」と、外部環境である「機会」「脅威」を掛け合わせる(クロスSWOT分析)ことで、自社のリソースを最大限に活かすための具体的な戦略の方向性を導き出すことができます。


内部環境(自社でコントロール可能)

外部環境(自社でコントロール困難)

プラス要因

強み (Strength)


目標達成に貢献する自社の長所(技術力、ブランド力など)

機会 (Opportunity)


目標達成の追い風となる外部要因(市場拡大、法改正など)

マイナス要因

弱み (Weakness)


目標達成の障壁となる自社の短所(人材不足、価格競争力など)

脅威 (Threat)


目標達成の逆風となる外部要因(競合の台頭、景気後退など)

例えば、「強み」を活かして「機会」を掴む戦略(積極化戦略)や、「弱み」を克服して「脅威」を回避する戦略(防衛・撤退戦略)などを検討します。


3.3 PEST分析でマクロな外部環境を理解する

PEST分析は、自社ではコントロールできないマクロな外部環境が、現在および将来にどのような影響を与えるかを予測・分析するためのフレームワークです。「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの視点から、世の中の大きなトレンドや変化を捉えます。中長期的な視点で事業機会を発見したり、潜在的なリスクを洗い出したりする際に特に有効です。

分析項目

主な分析内容

政治 (Politics)

法律・規制の改正、税制の変更、政権交代、外交問題など

経済 (Economy)

景気動向、株価・為替の変動、金利、インフレ・デフレなど

社会 (Society)

人口動態、ライフスタイルの変化、流行、環境問題への意識など

技術 (Technology)

新技術の登場、IT化の進展、特許、技術革新のスピードなど

3.4 AIDMA/AISASで顧客の購買プロセスを設計する

AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)は、顧客が商品を認知してから購入に至るまでの心理的なプロセスをモデル化したフレームワークです。これらのモデルを理解することで、顧客がどの段階にいるのかを把握し、各段階に応じた最適なアプローチ(営業戦術)を設計することができます。

特にAISASは、インターネットが普及した現代の購買行動を反映したモデルとして重要です。

モデル

プロセス

説明

AIDMA


(伝統的モデル)

Attention (注意)

製品やサービスの存在を知る

Interest (関心)

興味・関心を持つ

Desire (欲求)

欲しいと感じる

Memory (記憶)

記憶する

Action (行動)

購入する

AISAS


(現代モデル)

Attention (注意)

製品やサービスの存在を知る

Interest (関心)

興味・関心を持つ

Search (検索)

インターネットで情報を検索する

Action (行動)

購入する

Share (共有)

SNSなどで感想や情報を共有する

自社の商材やターゲット顧客に合わせてこれらのフレームワークを使い分ける、あるいは組み合わせることで、より精度の高い営業戦略を立案することが可能になります。


4. 【無料】営業戦略の立案に使えるフォーマットとテンプレート

営業 戦略 立案

ここまでのステップで営業戦略を立案する手順は理解できたかと思います。しかし、実際にゼロから資料を作成するのは大変な作業です。そこで、この記事で解説したステップを網羅し、入力するだけで戦略の骨子が出来上がるオリジナルのフォーマットをご用意しました。Excel形式でダウンロード後、すぐにご利用いただけます。チームでの共有や認識合わせにもご活用ください。


4.1 フォーマットのダウンロードと基本的な使い方

以下のボタン(※実際にはダウンロードリンクを設置)から、営業戦略立案フォーマットを無料でダウンロードできます。このフォーマットは、本記事で解説した5つのステップに沿って構成されており、抜け漏れなく戦略を策定できるよう設計されています。

基本的な使い方は非常にシンプルです。各シートが立案ステップに対応しているため、順番に項目を埋めていくだけで、自社の現状分析から具体的なアクションプランまでを可視化できます。

シート名

主な入力項目

目的

1. 環境分析シート

3C分析、SWOT分析、PEST分析の各項目

自社を取り巻く環境と、社内の強み・弱みを客観的に把握する

2. 目標設定シート

KGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)

最終的なゴールと、そこに至るまでの中間指標を具体的に設定する

3. ターゲット設定シート

ターゲット市場、ペルソナ(企業情報、担当者像、課題など)

アプローチすべき顧客像を明確にし、チーム内で共通認識を持つ

4. アクションプランシート

具体的な営業戦術、担当者、期限、必要なリソース

「誰が」「いつまでに」「何を」実行するのかを具体的に計画する

5. 実行・評価シート

KPIの進捗状況、達成度、課題、改善策

PDCAサイクルを回し、戦略の精度を高めていく

まずは自社の状況を整理するつもりで、分かる範囲から記入してみてください。チームメンバーと共同で編集することで、より多角的な視点を取り入れた戦略を立案できます。


4.2 営業戦略立案シートの記入例

「実際にどのように書けば良いのか分からない」という方のために、BtoBのSaaS企業をモデルとした記入例をご紹介します。自社の状況に合わせて応用しながらご活用ください。


4.2.1 記入例:株式会社サンプル(中小企業向け勤怠管理システムを提供)

項目

記入例

環境分析(SWOT)

強み(S): 導入のしやすさと手厚いサポート体制


弱み(W): ブランド認知度の低さ


機会(O): 法改正による勤怠管理の需要増


脅威(T): 大手競合の価格競争

目標設定(KGI・KPI)

KGI: 今年度の新規契約社数を300社にする


KPI: 月間商談獲得数50件、商談化率20%、受注率30%

ターゲット顧客

企業: 従業員30~100名規模のIT・製造業


担当者: 30代~40代の人事・総務担当者


課題: タイムカード集計に時間がかかっている、残業管理を効率化したい

アクションプラン(営業戦術)

・人事担当者向けWebセミナーを月2回開催(集客担当:マーケティング部)


・過去失注顧客への再アプローチ(担当:インサイドセールス)


・導入事例コンテンツの拡充(担当:営業企画)

実行と効果測定(PDCA)

・毎週月曜にKPIの進捗確認ミーティングを実施


・月末に各アクションプランの効果を測定し、翌月のアクションを調整


特に商談化率が低い施策については、原因を分析し速やかに改善策を講じる

5. 営業戦略の立案と実行における成功事例

営業 戦略 立案

ここでは、理論だけでなく実際の企業がどのように営業戦略を立案し、成功に導いたのかを具体的に見ていきましょう。BtoB(企業間取引)とBtoC(企業対消費者取引)の代表的な事例から、自社の戦略立案に活かせるヒントを探ります。


5.1 【BtoB】株式会社キーエンスの課題解決型営業戦略

BtoBにおける営業戦略の好例として、圧倒的な利益率を誇る株式会社キーエンスの事例が挙げられます。同社の戦略の根幹は、単に製品を販売するのではなく、顧客が抱える課題そのものを解決することにあります。

顧客自身も気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、付加価値の高いソリューションとして提案することで、価格競争に陥らない独自のポジションを確立しています。この「課題解決型営業」は、直販体制とコンサルティング能力の高い営業担当者によって支えられています。

戦略の要素

具体的な内容

環境分析

顧客の業界動向や製造現場のプロセスを徹底的に分析し、生産性向上やコスト削減に繋がるボトルネックを特定する。

ターゲット

国内外のあらゆる製造業。特に、自動化や品質向上といった具体的な課題を持つ企業の担当者。

提供価値

世界初・業界初の高付加価値製品と、それらを活用した課題解決のノウハウ。顧客の利益を最大化させるソリューション。

営業戦術

営業担当者が直接顧客の現場を訪問し、ヒアリングを通じて潜在的な課題を発見。その場で最適な製品を提案し、導入後のサポートまで一貫して行う。

この戦略により、キーエンスは単なるサプライヤーではなく、顧客にとって不可欠なビジネスパートナーとしての地位を築き、継続的な関係性と高い収益性を実現しています。


5.2 【BtoC】サントリーホールディングス株式会社のハイボール戦略

BtoC市場では、サントリーホールディングス株式会社の「角ハイボール」戦略が有名です。若者のウイスキー離れにより市場が縮小する中、同社はウイスキーの新しい飲み方を提案することで、市場の再活性化に成功しました。

「ウイスキーは年配の男性が飲むもの」という固定観念を覆し、食事に合う爽快な飲み物として再定義したことが成功の鍵です。緻密なマーケティングとプロモーションを組み合わせ、新しい文化を創造しました。

戦略の要素

具体的な内容

環境分析

ウイスキー市場の縮小と若年層のアルコール離れという脅威を分析。一方で、ビール以外の食中酒への需要が存在することを発見。

ターゲット

20代〜30代の若者層、特に居酒屋などの飲食店で最初の一杯を注文する層。

提供価値

「角ハイボール」というキャッチーな名称と、爽快で飲みやすいという新しい顧客体験。飲食店で手軽に楽しめるという利便性。

プロモーション戦術

人気タレントを起用したテレビCMで「美味しい飲み方」を大々的に訴求。飲食店に専用サーバーを提供し、品質の安定とブランドイメージ向上を図る。

この戦略は、「とりあえずビール」という長年の習慣に「とりあえずハイボール」という新たな選択肢を提示し、見事に市場のV字回復を成し遂げました。既存商品の価値を再定義し、新たな需要を創出した代表的な成功事例です。


6. 営業戦略の立案でよくある失敗と回避策

営業 戦略 立案

時間と労力をかけて営業戦略を立案しても、成果に結びつかなければ意味がありません。ここでは、多くの企業が陥りがちな失敗例とその具体的な回避策を解説します。自社の状況と照らし合わせ、同じ轍を踏まないようにしましょう。


6.1 失敗例1 計画倒れで実行されない

最も多い失敗が、立派な戦略を立てたものの、実際の営業活動に活かされず「計画倒れ」になってしまうケースです。原因は、戦略が具体的で実行可能なアクションプランにまで落とし込めていないことにあります。壮大な目標だけが掲げられ、現場の担当者が「今日、何をすべきか」を理解できなければ、戦略は絵に描いた餅で終わってしまいます。

失敗の主な原因

具体的な回避策

目標が壮大すぎて現実味がない

目標をブレークダウンし、中間目標(KPI)やマイルストーンを設定する。

アクションプランが曖昧で行動に移せない

「誰が」「いつまでに」「何を」するのかを明確にしたタスクリストを作成する。

必要なリソース(人・モノ・金・時間)が考慮されていない

計画段階で、各アクションに必要なリソースを算出し、確保する見通しを立てる。

回避策のポイントは、戦略を「実行できるレベル」まで具体化することです。スモールスタートで始め、成功体験を積み重ねながら徐々に活動を拡大していくアプローチも有効です。


6.2 失敗例2 現場の意見が反映されていない

経営層やマーケティング部門だけで策定された営業戦略は、現場の実情と乖離してしまう危険性があります。顧客と直接対峙しているのは現場の営業担当者です。現場のリアルな声や実情が無視された戦略は、形骸化しやすいだけでなく、担当者のモチベーション低下にも繋がります。

この失敗を回避するためには、戦略立案のプロセスに現場を巻き込むことが不可欠です。

  • ヒアリングの実施:戦略立案の初期段階で、トップセールスや若手社員など、様々な立場の営業担当者から顧客の反応や課題、営業活動のボトルネックなどをヒアリングします。

  • ワークショップの開催:現場のメンバーも交えて、SWOT分析やターゲット顧客のペルソナ設定などを行うワークショップを開催し、当事者意識を醸成します。

  • 丁寧な情報共有:策定した戦略の背景や目的、目指すゴールを現場に丁寧に説明し、納得感を得るためのコミュニケーションを重視します。

現場の知見は、戦略の精度を高めるための貴重な財産です。ボトムアップの意見も取り入れることで、より実効性の高い戦略が生まれます。


6.3 失敗例3 定期的な見直しが行われない

市場環境や顧客ニーズ、競合の動向は常に変化しています。にもかかわらず、一度立てた戦略に固執し、市場の変化に対応できないケースも典型的な失敗例です。最初に立てた計画が完璧であることは稀であり、実行しながら改善を繰り返すことが成功の鍵となります。

失敗の主な原因

具体的な回避策

「計画は絶対」という思い込みがある

戦略はあくまで仮説であると捉え、状況に応じて柔軟に修正する文化を醸成する。

効果測定の仕組みや指標がない

KGI・KPIを定期的にモニタリングし、計画と実績のギャップを可視化する仕組みを作る。

見直しのタイミングやプロセスが決められていない

週次や月次での進捗確認会議を設け、PDCAサイクルを回すプロセスを定着させる。

営業戦略は「作って終わり」ではありません。定期的に進捗を評価し、外部環境や内部環境の変化に合わせて柔軟に軌道修正を行うことで、初めて生きた戦略として機能するのです。


7. まとめ

本記事では、営業戦略の重要性から具体的な立案方法まで、初心者向けに解説しました。営業戦略とは、目標達成への羅針盤であり、場当たり的な営業から脱却するために不可欠です。環境分析から目標設定、アクションプラン策定、そしてPDCAサイクルを回すという一連のステップが成功の鍵を握ります。ご紹介したフレームワークやフォーマットを活用し、自社の強みを活かした効果的な営業戦略を立案・実行していきましょう。

 
 
 

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